韓国には南北統一という悲願があります。それはきっと、私たちが想像する以上に
切実で大きな民族一致の思いなのでしょう。
そして、同じ民族だからこその愛憎がそこには深く横たわっているような気がします。
間もなく日本でも公開になる「トンマッコルへようこそ」
戦争の無意味さや愚かさ、平和に暮らすことの意味について、一般的な戦争映画
とはひと味違うあたたかい視線で描かれたヒューマンドラマです。
「トンマッコル」に登場する北朝鮮兵士リ・スファ(チョン・ジェヨン)が韓国軍兵士より
も懐の大きな人物として描かれていたように、それより以前の
「JSA」(2000年9月9日公開)のソン・ガンホの演じた北朝鮮兵士もまた、韓国軍兵士
よりも魅力的な人物として描かれていましたし(あくまで個人的な意見ですけど・笑)
「シュリ」(1999年1月27日公開)のチェ・ミンシクも人間的な魅力を存分にみせて
くれた北朝鮮兵士でした。
ところが、「シュリ」以前の作品ではガラリと様相がかわります。
実はかなり前から気になっていた「アルバトロス」
当時軍服務中だったチャ・インピョ、イ・ジョンジェ、イ・フィジェなどが出演している
軍の反共広報映画として撮られた作品らしく、これがかなり残虐なシーン満載な
映画だと聞いていたからです。
この作品の公開が1996年7月13日ということですから、
「シュリ」からわずか3年前には北朝鮮=鬼畜として徹底的な反共政策がとられて
いたことがわかります。
北朝鮮の政治犯収容所での捕虜たちがうける凄惨な拷問シーンの連続はまさに
生き地獄です。いっそ気が狂ってしまう方が楽に暮らせるんじゃないかと思うほど
背筋の凍る生々しい拷問が果てしなくつづきます。
それでも主人公チャ・インピョは祖国韓国へ帰る希望を決してあきらめず、
どんなに過酷な拷問にも
不死身に不屈の精神で耐え抜きます。
タイトルの「アルバトロス」は、ゴルフ用語しか知らなくて意味不明でしたが(笑)
実は「あほうどり」の英名で、いつかは自由を手に入れてこの地獄から羽ばたき
飛び出してみせるという意味なんですね。
かつて思想の対立と、愛する女性が自分を選ばなかったことへの恨みをしつこく
いつまでも根にもち、徹底的にチャ・インピョをいたぶるイ・ジョンジェ。
本来悪役大好きな私なんですが、このジョンジェにはときめかなかったです。
「タイフーン」のときのように軍服姿も凛々し・・・くないんですよ^^;
なんだろう、いつものキレがないんですよ。反共映画だから、わざと魅力的に演出
しなかったというわけでしょうか(笑)
ひとつお楽しみなのは、シン・ハギュンの幻のデビュー作ということですね。
この時期、彼も軍服務中だったので一緒の出演となったのでしょう。
1シーンだけですが、アップで台詞もありますので見逃すことはないでしょう。
でも公式プロフィールでデビュー作をこの2年後の「あきれた男たち」にしている
のは、もしかして「アルバトロス」出演は消してしまいたい過去なのかも(笑)
時代に逆行するかのような反共色の強い作品を見た直後に、
将軍様ご乱心のニュースが飛び込んできたのは偶然とはいえ皮肉なことでした。
【追記】
なんとタイムリーな!
シネマ・クリニックに「拷問の技術」と銘打った映像集があがっていました。
大丈夫、フツーの映画なので「アルバトロス」のような衝撃映像はありませんので
安心して見られますよ(笑)よかったら、どうぞ。
見ながらカウントしていったら20を超えてしまいました^^;
1.相棒 2.偉大なる遺産 3.オーロラ姫 4.青燕 5.ありがたい人
6.僕が9才だったころ 7.犯罪の再構成 8.殴打誘発者たち
9.放課後の屋上 10.拍手する時に去れ 11.復讐者に憐れみを
12.大統領の理髪師 13.その時、その人々 14.死生決断
15.甘く、殺伐とした恋人 16.ひとまず走れ! 17.木浦は港だ
18.甘い人生 19.地球を守れ 20.親切なクムジャさん
21.オールドボーイ 22.淫乱書生 23.シルミド
24.花嫁はギャングスター
時には拷問され、またある時には拷問する側になっている人もいますが、
ペク・ユンシクは「その時、その人々」でも「地球を守れ」でもされる側で
ご苦労さまです。
それに引きかえ
イ・ボムスは、「相棒」でも「淫乱書生」でも拷問する側です。
ペク・ユンシクの方が悪人顔なのになぁ(笑)