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Secret Sunshine
Secret Sunshine_e0011707_1745459.jpg東京フィルメックスのクロージング作品「密陽」のスクリーン鑑賞をずーーっと楽しみにしてきたのですが、急遽個人的にもっと重要な用事が入ってしまい(あははは、ガンちゃんへの愛より強かったのねん、やっぱり^^;)、ゲットしていた舞台前チケットを無事知人に引き取っていただきました。



ということで、小さなテレビ画面でDVD鑑賞とあいなりました。




本作でカンヌの主演女優賞を受賞したチョン・ドヨン。たしかに彼女の力量を思う存分発揮しての熱演でした。その相手がソン・ガンホとあっては、演技派同士の熱演がぶつかりあった濃い作品なのかと思っていましたが・・・。

それはある意味で裏切られました。

Secret Sunshine_e0011707_17471826.jpg勿論、いい意味での裏切りでした。まるでドキュメンタリーを観ているような錯覚にしばしば陥りました。ひとりの不幸な女性を追ってカメラが淡々と追い続けていくような・・・。そこに描かれている不幸は、誰もが経験するようなことではありませんが、でも誰の胸にもリアルに迫ってくる無言の強さに圧倒されました。

夫の死と裏切り、家族の無理解、周囲の人間との軋轢。その中で女手ひとつで子供を育ててゆくプレッシャーは、ともすれば虚勢のひとつも張ってこそ踏ん張れるってことも、個人的にとてもよく理解出来たりします。そして、その虚勢のために新たな不幸が降りかかってくると、次々襲ってくる不幸が果たして誰のせいなのか・・・。彼女の慟哭が犯人にだけではなく、むしろ自分へむけたものだったような気がして胸が痛くなりました。

Secret Sunshine_e0011707_17482791.jpg子供の死という無残で悲惨な現実が物語の終わりではなく、むしろここから本格的にはじまっていくことも、本作をドキュメンタリーと感じる大きな要因のひとつかもしれません。

慟哭の果てに自らの罪と心の平安を宗教に救い求めた彼女に、つかの間の安息が訪れます。が、またしても現実はそんなに甘くないことを突きつけられます。

宗教にすがる気持ち、神に愛されている幸福感、そしてその信心が揺らぐ瞬間、復讐心から神を冒涜していく姿。どの部分をとっても痛いほど共感出来るのです。彼女のとった行動のどれひとつも否定することは出来ません。

犯人の娘が働く美容室でのシーンも、あそこで静かに受け入れてしまう演出を敢えてとらなかったことに、この作品がどこまでもリアルを追求していることを感じました。でも、ラストのシーンに、この先にある彼女の人生に光を感じることが暗示されているのでホッとしました。

Secret Sunshine_e0011707_17491679.jpgと、最後までガンちゃんについて触れないのもなんですが、溢れる個性を封じ込めて、ドヨン嬢の生き様ドキュメントに影のように絡まっていくガンちゃんはさすがだと思いました。これがファン・ジョンミンだったら、号泣して感動ラブストーリーになってしまったかもしれないし(笑)、ソルさまだったら、2人して深い迷宮に彷徨っていってしまいそうだし^^;

愛すべき俗物おやぢ、でも根は純情で気持ちの優しい田舎のオールドチョンガーは、ソン・ガンホだからこそ出せた味。願わくば、ドヨン嬢がもう少し抑えた演技をしてくれたら、もっと味わい深Secret Sunshine_e0011707_17501454.jpgかったのではないかと思いました。って、カンヌの主演女優賞にケチつけるつもりは毛頭ないですが(笑)。

先日観た「優雅な世界」のときと同じように、観終わった後からじわじわくる作品のようで、観ている最中には不思議と泣かなかったのですが、ここ数日は思い出す度に涙目になってしまいます^^;
by mario5846 | 2007-11-11 18:00 | ◆映画
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