人気ブログランキング | 話題のタグを見る
銀座で映画三昧その2
銀座で映画三昧その2_e0011707_20142429.jpg「ザ・マジックアワー」の後は腹ごしらえをして次なる寺島進出演作品「ぐるりのこと。」を観にシネスイッチ銀座へ向かいました。

この先ちょっと長いですし、ネタバレもありますのでご注意ください。








「ぐるりのこと。」(監督:橋口亮輔)140分

銀座で映画三昧その2_e0011707_19413938.jpg法廷画家のカナオ(リリー・フランキー)の目を通して、90年代初頭からの10年間の事件(地下鉄サリン事件や宮崎勤幼女連続誘拐殺人や池田小学校児童殺傷事件他)といった殺伐とした世相を絡めながら、ある一組の平凡な夫婦の辿る再生の歴史を淡々と丁寧に描いた作品です。

橋口監督は前作「ハッシュ!」から実に6年ぶりになる新作ということで、「ザ・マジックアワー」とは対照的に地味ながら予告を観てかなり期待して公開を楽しみにしていました。期待に違わず、こちらも2時間20分という尺の長さを全く感じさせない素晴らしい作品でした。

夫婦のセックスする日までカレンダーに書き込んでしっかり管理しないと気がすまない几帳面な性格の妻の翔子。対する夫は何事もマイペースで女にも若干だらしないカナオ(リリー・フランキー)。私も翔子ほどではないにしても似たような性格なので、あえてカナオのような一見ルーズな男性に惹かれる気持ちがよく分かります。でも結局その欠点に苛々するわけですが(笑)。

銀座で映画三昧その2_e0011707_19562177.jpgある出来事をきっかけに妻の精神のバランスが崩れてしまいます。壊れていく木村多江さんの迫真の演技は鳥肌が立ちました。ご本人は撮影中に本当の鬱になったということですが、まさに圧巻です。対するリリーさんの演技してるんだかしていなんだかという飄々した雰囲気がまた最高に素晴らしいです。
この2人だけでも十分にドキュメンタリーを観ている錯覚に陥りそうになるのですが、2人を取り巻く"ぐるり"の人間たちもまた、どこにでもいそうなキャラなんですよねぇ。適当にいい人だったり、適当にいい加減だったり(笑)。

例えば翔子の実兄の勝利(寺島進)ですが、バブルの頃の不動産屋でかなり羽振が良いらしくいかにも成金趣味っぽい男w その妻(安藤玉恵)も元ヤンの尻尾をいつまでも引きずった感じなんですが、こう書くとステレオタイプのヤンキー夫婦を思い描くでしょ?でもね、なんていうか嘘っぽくないんですよ、このお2人。芝居用に作られたキャラというともっと大袈裟であざとくて、せっかくの木村さんとリリーさんの良い芝居から浮いてしまうと思うのですが、なんていうかホンモノの匂いがするんですよ(笑)。寺島さんも遂に年貢を納めて地元の幼なじみと所帯持ったのかなぁ・・・と、錯覚してしまうくらいリアリティのある夫婦なんですよねぇ(笑)。と、珍しくファン目線の感想もチラリと書いてみるw

翔子とカナオのセックスだとか、入浴シーンだとか、字面で書くと非常に衝撃的なシーンも映像で観るとくすっと微笑んでしまう^^そんな日常のささやかな和みのシーンが随所に挟み込まれていて、辛いことも幸せなこともひっくるめて背負っていかなくてはいけないのが人生なんだなぁ。

銀座で映画三昧その2_e0011707_19581748.jpgとかく結婚って、夫婦だけの問題じゃなくて互いの身内だとか親戚だとか職場だとか"ぐるり"の煩わしさに振り回されることが多いけど、翔子は「やめちゃいなよ、あんな男」と無責任に言い放つ母親(えてして身内は言いがちですw)の言葉に耳を貸さなかったし、カナオは精神を病んで苦しんでいる妻から決して逃げ出さずにそばで静かに支え続けた。特別ドラマチックな何かが起きたわけではないけれど、淡々とお互いの手を離さずに歩いた10年の月日の意味は重い。手を離すことは簡単だけれど、離さないで踏んばる先にしか見えてこない光っていうのがあるのかもねぇ・・・。

いろいろな思いが交差していき、後になってどんどん心に沁みこんでいくようで、長く余韻に浸れます。好き嫌いがはっきり分かれそうな作品ですが、私にとっては今年観た映画(上半期)ベスト3入りは確定です^^

*************************************************************************
こちらの舞台挨拶は上映前にありました。
銀座で映画三昧その2_e0011707_203427.jpg
リリーさんの声ってマイクを通すと更に素敵なんですよね。俳優だけじゃなく、声優もいけるんじゃないかと本気で思うくらい^^映画の中と同じで、淡々とお話になるのですがそこはかとなくユーモアが感じられます。映画を盛り上げるためにテンションを無理矢理上げて、ついつい勢い込んで余計なことまで喋ってしまう某アニキwと違って、同い年(誕生日も8日違い)なのにこの差は何?w

当日は同じ初日の「ザ・マジックアワー」の総勢9名の舞台挨拶登壇者に名を連ねていなかった寺島さん。劇場は目と鼻の先の距離でですよ。おまけに「ザ・マジックアワー」の方が役柄的に重要度高いです。なんでかなぁ・・・と、連れと一緒に不思議に思っていたのですが、

寺島さん:「この映画は○宝や松○や○映といった大手の映画会社や、フ○テレビのようなテレビ局もついていないけど、素晴らしい映画です」と言いながら、くくく・・(噴出すw)。

(すかさず)
リリーさん:「東○怒らせちゃったからね」「総スカンくらっちゃった」って淡々とユーモアたっぷりに突っ込まれていました(膝から崩れ落ちる寺島さんw)。

註:「ザ・マジックアワー」怒涛のプロモの某メインイベントで先日大失言をした寺島さん(笑)。

リリーさんのジョークかもしれませんが、さもありなん。私と連れは「ははーん、納得」と膝を打ちました(笑)。まぁ、気をつけましょう。口は災いの元です。洒落の通じる相手を選びましょうw

寺島さんはその後もテンション高めで、隣にいる妻役の安藤玉恵さんに終始突っ込んだり絡んだりして困らせていました(笑)。

見どころを聞かれたリリーさんが「しょぼい貧乏くさい夫婦の物語ですが、(義)兄がベトナム戦争から帰ってきて最後は水浸しになる大スペクタクル映画になっています」と言うとw「「野獣死すべし」じゃないか!」と寺島さん大受け。そうそうそう!シネ北であった松田優作追悼上映会で、司会のリリーさんと寺島さんの生トークを目の前で拝見したのは4年も前のことになるんですねぇ。あの時もはじめてみるリリーさんのダンディさに心を少し奪われかけましたが(笑)、まさか俳優としてお目にかかれる日がくるなんて思いもしませんでした。

銀座で映画三昧その2_e0011707_20102124.jpg「ザ・マジックアワー」のような派手な演出はないものの、監督やキャストの方の人柄が滲み出る、笑いに満ちたあたたかい舞台挨拶の全貌をレポすると、まだまだ長くなりそうなので、最後にひとつだけ。

橋口監督は前作「ハッシュ!」を世に送り出した後うつ病に罹られたり、プライベートで辛い時期を過ごされてきた6年間だったそうです。そのご自身の思いをカナオと翔子に投影させて、「ひたむきに生きる人が報われる映画をつくりたかった」と仰った言葉が胸に響きました。

人と人との繋がりを見つめなおし、あたたかい気持ちになれる素敵な映画です。「ザ・マジックアワー」同様日本アカデミー賞には絡んでこないかもしれませんが(笑)、どうか是非ご覧になってみて欲しい作品です。
by mario5846 | 2008-06-09 21:51 | ◆アニキ♥/寺島進
<< 検索してみよう^^ 銀座で映画三昧その1 >>